不登校急増のピンチをチャンスに!〜子どもたちの「声なき声」と、多様な個性をひきだす教育/学びのために今できること〜【前編】

【★更新日 2023/9/25】

 
 
こんにちは、未来の学校のシミズです☀️
いつも記事などご覧いただき、ありがとうございます!
 
 
学校の教育には、さまざまな課題があると思いますが、僕が何より「大事」だと思っているのは、子どもたち/生徒たちにとって、「学校が生き生きと学び、成長できる場所になっているか?」という点です。
 
そして、それを端的に示すバロメーターが、いわゆる「不登校」の状況ではないかと思っています。
 
 
もし学校が、子どもたちにとって「生き生きと学び、自分が大きく拡がる楽しい場所」だと肌で感じられる場所になっていたら、子どもたちは喜んで学校に行き、勉強に夢中になり、元気のエネルギーが循環するようになっているはずです。
 
 
でも実際の状況はどうでしょうか。
結論から言えば、その答えは残念ながら「NO」だと思います、、
 
 
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「不登校の子どもが年々増え続けている」
 
これは多くの方がご存知のことだと思いますが、その状況の険しさは、ここに来ていよいよ限界を迎えてきています。
 
 
今ある状況は、これまで何十年にもわたって「日本の学校教育」の問題が指摘されながら、国としても自治体としても抜本的なビジョンを打ち出すことができず、時代や社会の価値観・あり方は変わっても、「学校/教育だけが変わらない」と言われてきた、その “当然の帰結” だと思います。
 
もうずいぶんと昔に、教科書は「使えないもの」の代名詞となり、学校の先生(教師)は、保護者のみならず子どもからも「軽んじられ、馬鹿にされる」対象にさえなってしまいました。充たされない子どもたちは、いじめや “非行” という形で、その心のマイナスを外側に向けることで “バランス” を保とうとし、そして何より、「学校になじめない子ども」とその家庭が、どうにもならない状況の中で苦しみつづけ、そうした子ども/生徒たちは増えつづける一方です。
 
 
 
学校というのは、家庭とならんで、子ども(人間)の成長を担う社会/国の根幹であり、文字どおり「未来がつくりだされる」最先端の場所であるはずです。それがこんなありさまでは、様々なところで謳われる「豊かな社会」や「希望あふれる未来」など、望むべくもありません。
 
 
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ただ、僕たちが「今のこの世の中」を生きる当事者として、状況とちゃんと向き合おうとするならば、危機(ピンチ)は最大のチャンスともなります。
 
いつだって「問題は、より自由な世界/ステージへの扉」だからです‥🚪
 
 
一人の個人であれ社会であれ、何かおかしな状況が生じるというのは、「それは違うよ〜」「新しいやり方を試してみてごらん〜」「物事の見方/考え方をちょっと変えてみる必要があるよ〜」といったサインだということ。
 
“夜明け前が一番暗い”、あるいは “陰極まって陽となす” という言葉もありますが、立ちはだかる壁に頭をガンガン打ちつけるだけでなく、「問題」が僕たち/この社会を “より自由な広い世界” へと導いていってくれている。そんなふうに、冷静な理解をもって今を歩む時、はじめて僕たちはその扉の向こう側へと進んでいくことができますし、それが「問題を解く」ということの本当の意味だと、僕は思っています‥!(^^)
 
 
不登校をめぐる状況については、今さらデータなどで確認するまでもないという気もするのですが、「今(いま)を本当にちゃんと見つめるところに、新たな道が開ける」と思うので、敢えて一度、今のリアルな状況を押さえつつ、この危機的な状況(ピンチ)をチャンスに変えるために、何が出来るのかを、具体的に見ていきたいと思います。
 
 
★不登校のお子さん・親御さんへ
いま現在、不登校などで苦しい思いをされている方は、お子さん本人も親御さんも、「数字」なんか見ても何の意味もなさないということは重々承知の上で、学校に馴染めないのは、決して普通じゃないのではなく、今の世の中ではごくごく “普通” のことで、むしろ「時代の先を行く最先端なんだ‥!」と、そんなふうに思うことが出来たら‥という思いも込めて、書きたいと思います。

(*僕自身、中学から高校にかけて、学校にも家にもどこにも居場所がなく、今でいう不登校の状態でずっと苦しい時期を過ごしていましたから。w)

 
 
 
【直近 R3年度(2021)の小/中学校の状況】

 
不登校については、毎年、文部科学省が実施している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の中で、その全体的な状況を把握することが出来ます。
 
*調査の概要や、各年度の結果を見ることができます(↓)
 
 
そもそも論として、公教育を所管するトップ(文科省)が、この現状を「生徒指導上の諸課題」として扱っていることが、何より “最大の問題” なのですが、そこはいったん置いておいて、、
 
ポイントが分かりやすくなるよう、公表されている最新のR3年度(2021年度)の結果に「赤で注釈」をつけたので、ざっと見ていきたいと思います。(*2023年3月時点)
 
 
【重要】
ここでの不登校の数字は、「コロナ関連」の欠席を除いた数字になっています。
つまり「コロナの影響で見かけ上、人数が増えている」ということではないということです。

(*「コロナの感染回避」による長期欠席者は、不登校とは別に約5.9万人。)

 
 
 
◆ この5年間で「不登校が急増」している
 
(出典:上記URL内の「令和3年度の調査結果概要」を基に作成 /以下同じ)
 
 
【要点】
● 不登校の人は全国に約24.5万人いて、前年度から25%増(1.25倍)と大きく増えている。
● 特にこの5年間で、小・中学生ともに急増している。
 
 
不登校の問題は、これまでもずっとずっとありましたが、
グラフを見ると一目瞭然で、この5年ほどの間で、様相が大きく変わってきています‥!
 
それまでの “横ばい状態” から、急に年々、不登校状態の生徒さんが「目に見えて」増えはじめ、
文字どおり “うなぎ上り” に増えていっています。
(*グラフをよく見ると、10年前ぐらいから今の不登校増加の流れが始まっているのが分かります。)
 
 
この流れは「全体に占める割合」(1,000人当たりの人数)で見ても、明らかです。
 
【要点】
● 10年前と比べると、特に小学生が約4倍(3.3.人⇒13.0人)と著しく増えている。
 中学生も約2倍(26.4人⇒50.0人)に大きく増加。
● もともと小学生と比べて、不登校の生徒が多かった「中学生は20人に1人」が不登校状態。
 
 
少し前は、中学生と比べれば、小学生の不登校は “低水準” で、世間一般としては、不登校と言えば「中学生以降の問題」というような雰囲気がありました。でも、ここ最近で、小学生から不登校になる子どもが急速に増えていて、10年前のなんと約4倍(の割合)になっています。
 
もともと高い水準だった中学生も、特にこの5年の急な増加の流れで、20人に1人が不登校という状態になってしまっています。
 
 
 
◆ 学年が上がるにつれて不登校は増え、中学になると急に増加する。
 
 
 
【要点】
● 不登校の子ども/生徒は、学年が上がるごとに、どんどん増えていく
● 中学校に入ったタイミングで、急に不登校がぐっと増える。(小中ギャップの存在)
 
 
これが意味しているのは、学校が「行けば行くほど楽しくなる場所」ではなく、
「学年が上がる/成長すればするほど、辛い場所になっていく」という厳しい現実です。
 
 
また、グラフを見ての通り、中学に入ると急に様相が変わるのですが、
これは僕自身、学習塾などの仕事を通して、子どもたちと直に接してきた経験からもはっきりしています。
 
小学校から中学校に入ると、子どもたちの “体感”として、学校で日々課される勉強や、定期テストなどの「圧」(空気感)が、ガラリと変わるのです。また家庭内においても、進路のことなどもある中で、親が子どもの勉強面や成績に対して向ける「眼差し」(態度)が、やはり小学生の時までとは雰囲気が変わっていったりすることもあるかもしれません。
 
いずれにしても、中学に入ると途端に、子どもたちが受ける “プレッシャー” が、急に大きくなっていくという現実があるわけです。
(*子ども/生徒さんたちが、具体的にどんな思い・感覚を抱いているかについては、後述します。)
 
 
 
◆ 不登校の子どもの「2人に1人が無気力・不安」
 
 
 
これは、ちょっと “ショッキング” な事実ではないかと思います。
 
友だちとの人間関係とか、勉強面のこととか、あるいは家庭内の問題とか、不登校の背後にはさまざまな要因や状況があるとしても、とにかく圧倒的に学校に行けない理由の大半が、「無気力・不安」です‥。
 
 
日本の社会が抱えている問題として、多くの子どもや若者が将来に対して希望を持つことができず、治安の良さや身体的な健康度はとても恵まれていながら、「幸福度」は先進国中で最低レベルというのは、よく知られていることです。
(*有名な「世界幸福度ランキング」の他、ユニセフによる子どもの幸福度に関する報告書で、日常の「生活に満足している」と回答した15歳生徒の割合は「38カ国中37位の低さ」。)
 
また、自ら命を絶ってしまうほど追い詰められてしまう「自殺者」の数を見ても、10代・20代・30代の死因の第一位はすべて「自殺」という異常な状態にあるのですが、こういった社会を覆っている閉塞感や暗雲が、「学校における子どもたち/生徒たちの日常」と地続きで、無関係ではないことは、もはや否定できないと思います。
 
なぜなら子どもたちにとって、自分が「今日という1日をどんなふうに過ごすか」「どんな毎日を送ることができるか」の大枠を決めてしまう(*そして先述のとおり、中学以降は特にその強度が増していく)、それぐらい子どもたちの日常(=生きる現実)を根本から左右するものが「学校」だからです。
 
 
冒頭にも書いたように、学校が、子どもたち/生徒たちにとって「生き生きと学び、自分が大きく拡がる楽しい場所」だと、肌で感じられる場所になっているか?
 
それに対して「YES」と言えるような学校を描きカタチにしていくことは、教育という面はもちろん、この社会全体の活力/幸福感(ひいては、国の経済力や発展)にもダイレクトに関わってくる最重要課題だと思います。
(*上に書いたように、子どもの “問題行動” や不登校は、「生徒指導上の諸課題」ではありませんね、、)
 
 
 
◆ 不登校の子ども/家庭の「孤立化」が進んでいる
 
 
 
最後に、不登校になっている子ども/家庭が、学校の内外で「何かしらの相談等を受けたか」というところを見ると、これもやはりこの5年で10%以上低下していて、不登校の子ども/生徒および家庭の「孤立化」が進んでいるという状況が、データとしても明らかになっています。
 
 
ただ、これについては注意が必要というか、では「相談」を受けられれば、当事者の不登校にかかるさまざまなリアルな問題が、本当に解決するのか‥?ということを、ちゃんと考えなければいけないと思います。
 
不登校の問題に対しては、どの自治体においても、生徒・保護者が相談できる「窓口」を設けて、人員を配置し、状況の聞き取りおよびそれに応じた公的/周辺サービス(カウンセリングや医療行為、学習サポートなど含む)の提案や紹介等を行うといった対応などが、最低限実施されているかと思います。もちろん、そのように「社会がより連携し、助けを必要としている人や家庭のための支援を充実させる」ことはとても大事なことですが、問題は、そこで為されることが、形だけのもの/表面的なものにとどまっていては意味がないということです。
 
 
「なぜ、子どもたちは『行ってきま〜す』と元気に、学校に行けないのか‥?」
 
それを、今回見てきたような「学校の実情」を把握している、すべての学校/教育関係者(政・官・民)が、本当に自分事として自問自答し、具体的に向き合うことができるかにすべてがかかっていますし、上でデータとして見てきたように、とどまるところを知らず増え続ける「学校に行けない/行かない子どもたち」は、それをちゃんと “行動” として表して、「声なき声」を上げていると僕は思うのです。
 
 
 
不登校の子どもたちが感じている “本当の感覚” とは?【後編へ】

 
この記事では、学校教育をめぐるシビアな現実を見てきましたが、
 
学校教育の問題を、あえて突き詰めて言ってしまえば、
「学校という『狭い枠』のなかに、子ども/生徒たちの世界が収まりきらなくなっている」
ということだと思います。
 
 
記事も長くなってきてしまったので、続きは【後編】ということで、学校の空気感になじめず不登校になっている子どもたちや、学校に通いながらも何か “釈然としない” 感じを抱えたまま日々を過ごしている生徒さんたちが感じている思いや「感覚」がいったいどういうものか、僕なりに感じているところを、少し詳しく言葉にしたいと思います。
 
そしてその上で、いま僕たちが出来ることについても、具体的に見ていきたいと思います‥!